東京2020大会開催都市・東京の責任と姿勢

今世界では、ロシアによるウクライナ侵攻、また突然の米国、イスラエルによるイラン攻撃とイランによる報復攻撃など、軍事的緊張はかつてないほどに高まり、激しい武力の応酬が報じられています。

そうした国際社会の分断の影は、間もなく開催(3/6より)されます、ミラノ・コルティナ冬季パラリンピックにも及びかねない状況です。

スポーツは本来、人と人を結び、国と国を超えて尊重と友情を育む営みでなくてはなりません。

特に今回のパラリンピックは、昨年の9月にIPC(国際パラリンピック委員会)総会で、ロシア・ベラルーシへの制裁解除がなされた初めての大会であり、両国の国旗と国家も認められる大会となります。国際社会の賛否が大きく分かれる状況の中、包摂性(インクルージョン)、機会の平等を重視した、IOC(国際オリンピック委員会)とは異なった判断のもとでの開催となり、オリンピックの原点である、平和の祭典をどう受け止めるかが問われる大会になります。

近代オリンピックは、仏の教育者、ピエール・ド・クーベルタン男爵が、1896年に提唱した理念、「スポーツを通じて、国際理解と平和を促進する」ことにあります。

国籍や宗教、政治体制を超えた同じルールのもとで競い合うことが、対立ではなく尊重と友情を育むことが、オリンピックの根本思想になっています。

そしてその理念は、古代ギリシャ時代に宣言された「聖なる休戦」を基にして、現代でも大会ごとに国連総会で採択される「オリンピック休戦決議」に繋がっています。

しかし実際には、オリンピックは「平和の象徴」である一方、このたびの「五輪休戦決議」を無にするような政治や戦争の影響をこれまでも幾度となく受けてきました。

それでも「平和」を掲げ続けてきたのは、国家間が対立していても、選手同士が握手を交わす姿勢に、政治とは別次元の「共存の可能性」を見い出してきたからであります。

オリンピックが示す「平和」とは、単に「戦争がない状態」ではなく

●多様性を認める

●対話を続ける

●公正なルールの下で、競い合うこと

と言う、「共生の社会」の機会に基づいています。

特にパラリンピックの理念は、「苦境」の中にあっても、人間の可能性は大きく膨らみ、世界が不安定であるほど、そのメッセージは強くなることであります。

これまでの軍事行動に対して憤りを感じるのは自然のことでありますが、怒りだけでは選手の輝く舞台を守ることには繋がらないとしたIPCのアンドルー・パーソンズ会長の言葉は、正にそのことを示していると思います。

そしてこの度の制裁解除の方針も、独立した団体として、大会を「政治の延長戦」にするのではなく、政治とは別に人間同士が向き合う場として守るべき姿勢を示したものと感じます。

またパラリンピックは、単なる競技大会ではなく、障害の有無を超えた「尊厳の回復」の象徴であり、戦争が「破壊」だとすれば「パラリンピック」は「再生」の象徴だからです。

東京は2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市です。

あの大会は、コロナ禍という未曽有の危機の中で行われました。世界が分断と不安に揺れる中、それでも開催を決断しました。

それは、競技を実施するためだけでなく、困難の時代にあっても、人間の尊厳と可能性は失われないというメッセージを発するためでした。

また東京大会はパラリンピックを通じて「共生社会」という理念を都市の中心に据えました。

障害のある方もない方も、ともに生き、ともに挑戦する社会、バリアフリーの街づくり、心のバリアフリーの推進、多様性を尊重する文化の醸成にも力を入れいてまいりました。

そして東京は、昨年、世界陸上競技選手権大会、第25回夏季デフリンピック競技大会を開催いたしました。この根底にある思想は、「スポーツを通して、多様性を尊重し、共生社会を実践する都市東京の実現」でした。

今世界の分断が深刻さを増し、緊張が走る中で、東京は何をすべきか。

そのことをそれぞれが自らに問い、力を合わせて、希望を持って、「共生社会」実現へのスローガンを掲げ続けていくことだと思います。

第一に、スポーツの独立性と尊厳を守る。

政治的対立があっても選手の努力まで否定されないこと。

第二に、平和を希求する姿勢を明確にする。

東京は戦争や対立ではなく、対話と共生を選ぶ都市であると発信し続けること。

第三に、選手一人ひとりの挑戦を守る環境を整える。

 長年努力を重ねてきたアスリートの輝きの場を、国際情勢によって奪わせないこと。

東京は2020大会で、このことを世界に示しました。

だから今も、静かであっても揺るがない姿勢が求められます。

国政政治は国家が動かしますが、スポーツは市民・社会が支えています。

私たちはスポーツを通じて、分断ではなく連帯を選びます。

武力ではなく対話を求めます。

排除ではなく共生を進めます。

その確固たる信念と、一歩一歩の行動が、東京2020大会の開催都市としての、また昨年の世界陸上、デフリンピック開催都市としての責任であり、未来への約束であると確信しています。

3月26日から始まりますミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会を、皆で応援してまいりましょう。

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