ロシアによるウクライナ侵攻の一日も早い解決に向けて

欧米による戦争回避に向けた外交努力も虚しく、ロシア軍によるウクライナ侵攻が2月24日(木)に強行され、首都キエフだけでなく第2の都市ハリコフなど、国を包囲するような形で激しい戦闘が続いております。ロシア軍の圧倒的な武力による抑圧に対し、自国を守ろうとするウクライナの軍だけでなく国民による抵抗により、戦闘は激しさを増し、攻撃は軍事施設にとどまらず無差別攻撃に近い状況で、既に子どもを含む多くの尊い命が失われております。

ロシア軍によるこれ以上の暴力を速やかに停止し、一日も早い解決が図られますよう心から祈念致します。

このような状況の中で、世界中の人々がSNSを通じウクライナの方々に寄り添い、ロシアによる蛮行を非難しております。かつてのような帝国主義的な発想の国に対し、世界中の人々が矛をインターネットに変えて団結し、戦争に反対する声を上げることが大きな壁となり、暴力を抑える力となれば、平和を希求する未来への希望となります。

実際にこうした世論に押されるように、ロシアへの制裁に対しては、どちらかと言うと消極的だった米国、ドイツ、イタリアなどの国々も結束して、世界最大級の国際決済組織である国際銀行間通信協会(SWIFT:本部ベルギー)からロシアの金融機関を排除し、更に外貨準備の取引を制限し、プーチン大統領ら政府関係者の資産凍結などの追加制裁が決定しました。こうした厳しい金融制裁により、今後激しいインフレがロシア経済を襲うことになります。

また昨日(2月28日)、ウクライナへの軍事侵攻をめぐり、193か国の国連加盟国が参加できる国連総会の緊急特別会合が開催されたことは、力による現状変更を決して許さないとする国連の意志を結束して示す大変意義のあることと思います。これまで国連は、常任理事国の拒否権行使により、機能不全を指摘され続けており、今回の結束が、今後の国連改革に向けて、大きな一歩となるよう期待致します。

日本においてはこれまで、「孔孟思想」に示された惻隠の情、相手に寄り添う共感力は有していても、具体的な行動力は物足りないと言われてきましたが、今回は新たな世界の結束に乗り遅れることなく、断固とした厳しい制裁に足並みを揃えることが出来たことは、今後中国の台湾進攻の脅威を考えた上で大変有効であると思います。

この度の核戦力を念頭においた「抑止力部隊」に特別態勢を命じ、軍事侵攻を非難する欧米を威嚇するプーチン大統領の姿勢は、ロシアが加盟する核拡散防止条約(NPT)に基づき今年1月に宣言した核戦争防止と核軍拡競争の回避を最重要の責任だとする共同声明に著しく背く行為であります。今後は日本が被爆国としての宿命において、結束の中心となり、ロシア、ベラルーシの軍事行動に対し、積極的に反対の声を上げていくべきであります。

私はかつて、国連支援のボランティアとしてアフリカのスーダンで活動致しました。当時は、隣国のエチオピアにおける大飢饉により住む所も食べる物も不足した難民の方々がスーダンに押し寄せ、子どもを含む多くの方々が日々亡くなっている状況でした。そうした中、国連高等弁務官事務所(UNHCR)が人道支援をスタートさせ、私は日本の医療チームのスタッフとしてスーダン東部のファウ村で活動させていただきました。日本において平和で恵まれた環境の中で生活してきた私にとって、スーダンでの理不尽な現実とのギャップにより自責の念にかられ、自分の無力さを痛感させられました。しかし、現地スタッフの方より、目の前の方々に寄り添い、その過酷な現実を発信し、知らしめる行動をしていくことが何よりも大切な使命であるとアドバイスを頂き、その後の人生における核なるものを持つことができました。

今私たちにできることは、それぞれの立場において、ウクライナへの最大限の支援、停戦に向けたあらゆる取り組み、そして何よりも「力による一方的な現状変更」は認めない断固たる姿勢を示していくことです。私自身一日も早い停戦と解決に向けて取り組んで参ります。

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