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ケアリーバーの支援の拡充に向けて

虐待や貧困、親との死別などで児童相談所に保護され、児童養護施設や里親家庭などで育った保護児の保護を離れた後(ケアリーバー)の支援の拡充が求められております。

児童福祉法では、児童養護施設や里親の家庭など社会的擁護のもとで育った子供たちは、原則18歳で自立を求められます。22歳を迎える年度末まで期間を延長できる仕組みはあるものの、多くは高校卒業とともに施設などを離れます。進学が少ない背景には、学費や生活費の不安のほか、周囲に進学した施設出身者がおらず、自信が持てないことがあると厚生労働省調査で報告されています。

児童福祉法は、戦争の惨禍による、「戦災孤児」「浮浪児」への対応として、戦後最も早い時期の1947年に制定されました。

1997年、児童福祉法の大幅改定によって、「養護施設」は「児童養護施設」に名称を変更し、目的に「擁護すること」に加えて「自立を支援すること」が明記されました。2004年の改定では乳児の入所が認められ、退所者の自立援助も児童養護施設の目的とされました。しかし、その後児童福祉施設最低基準の改正は、職員配置基準において1979年から2013年の間、何も前進することはなく、施設側による最低基準を超えた取り組みにより、行われて参りました。

こうした状況が大きく変化する契機になったものが、1989年に国連総会で採択された「子どもの権利条約」です。子どもの「最善の利益」を保障し、子ども自身を「権利行使の主体者」とし、彼らの「意見表明権」を尊重することが謳われた画期的な条約と評価されております。

日本は1994年、158番目にこの条約を批准しましたが、子どもの権利条約の内容と国内法には、数々の矛盾が発生していました。特に子どもの意見表明権については、現在もその保障のあり方について議論がされております。

ケアリーバーの抱える悩みや問題は保護された経緯や年代などによって異なりますが、生活費の悩みは進路を問わず深刻です。

この度厚生労働省が全国的に行った初の実態調査において、生活費を賄えずに進学先を中退したり、危険な仕事を選んだりするケースが最も多いことが公表されました。

現在各地の大学では、学費の免除や生活費の支給、入学後の定期面談などケアリーバーを対象として支援制度を導入する動きが広がりつつありますが、虐待の経験が心の傷となって周囲とうまく関係が築けず、助けを求められないまま孤立して退学してしまう子供の実態があります。

また調査の中で、施設職員や里親がケアリーバーと1年間で1回も交流がなかったケースが31.1%、そして保護を離れた後、住所が不明になっている対象者が65%もいることが浮き彫りになりました。

そうしたことから、本人と支援側との繋がりを大切に、いつでも相談サポートできる「支援コーディネーター」の設置が進められておりますが、現在児童相談所を設置する73の自治体のうち、支援コーディネーターを配置していない自治体が35.6%あり、今後更に支援情報の周知やケアリーバーが自分の意志で相談先や進路を選べる環境整備など、自立後を見据えた事前サポートが重要です。

東京都においては、2012年4月より、児童福祉法改正(1997年)により、児童養護施設における自立支援機能の強化が明確化され、子どもの自立支援の中心的役割を担う職員として自立支援スタッフや施設入所中の自立に向けた支援コーディネーターを配置し、2013年4月からは、自立援助ホーム(義務教育終了後15歳から20歳までの家庭のない児童や家庭にいることができない児童が入所して、自立を目指す家)において、入居中または退居した児童等への就労定着支援等を手厚く行うジョブトレーナーを配置し、自立支援担当職員の全国配置に向けて非常に有用なモデルとして評価されております。これらのスタッフを複数配置することで、チームによる実践が可能となり、課題の解消、緩和に役立ってきました。

令和2年度より、国において初めて自立支援担当職員加算が創設されましたが、支援回数の要件が厳しく使いづらさが指摘されております。今後、都においては、国の予算をもとに、上乗せ横出しをし、使い勝手の良い、更なる支援を強化となるよう取り組んで参ります。

最後に、国において、「新しい社会的養育ビジョン」という提言が2017年8月2日に発表されました。その内容は、社会的養護の仕組みそのものを根底から変える方針となっており、これからの国・自治体の社会的擁護政策のあり方に大きな影響を与えるものと感じております。

私たちは、このビジョンについて、現実に立脚した提言であるとは思えず、これまでの施設養護の運営と実践の積み重ねの歩みを無視した内容に驚いております。制度改革を行うのであれば、その中に、一番大切な「子どもの最善の利益」を求めていく方針が示されなくてはならないと考えております。私はこれからも、今後の社会的養護の発展にとって何が課題か、常に問題意識を持って、現場の声を大切に、全力で取り組んで参ります。